自由旅行入門



●自由旅行とは

 自由旅行とは、旅行会社が旅行計画を策定し、パンフレットなどで募集するタイプの募集型企画旅行いわゆるパッケージツアーに対して、往復航空券のみを購入し、宿泊や現地移動は、予約なしあるいは部分的予約で旅行する形態の海外旅行を一般的にそう呼んでいる。日本の旅行業法の定める旅行形態には、自由旅行という呼び方は使われず、受注型企画旅行の一部および手配旅行の一部が、それにあたる。国内旅行は、むかしから自由旅行の方が一般的なので、あえて自由旅行と言う人は少ない。 英語では、Independent Travelと言うが自由旅行の方が一般的な欧米では、単に、Travelingと言えば自由旅行を指し、パッケージは一般にTour(短期の旅行)の方を使う。 また、フレームザックを背負った若者の自由旅行者をbackpackerといい、倹約旅行者をbudget travelerといいます。旅行業界ではF.I..T.(Foreign Individual Tour)のセクションで取り扱うことが多いため個人旅行(団体旅行に対して)と いう呼び方もありガイドブック名に使われているため広まったが、ハンドメードパッケージ(受注型企画旅行や手配旅行で、旅行会社が旅程中の交通機関や宿を初め、観光なども予約していく旅行)も個人旅行という言い方の 中に含まれてしまうので、自由旅行を個人旅行と呼ぶことは感心しない。

●日本における自由旅行の歴史

旅行形態として、人類史の上では、太古の昔からパッケージツアー?と自由旅行?のようなものは両方存在していたと思う。近代になって旅行会社が誕生する以前であっても集団(軍隊や宗教巡礼団や政治使節団)で旅行する場合は、パッケージツアーのように個人の自由度の少ない旅行形態と、マルコポーロや探検家のようにより今の自由旅行に近い形態もあっただろう。しかし、国際通貨が存在しない近代までは、訪問先で仕事ができる特殊な技能の持ち主や権力者の紹介状を持つ人、宗教上の特殊な身分の人でないかぎり旅行そのものが困難であったろうし、狩猟・採集の時代でないかぎり、自分の話せる言語圏や宗教文化圏以外の国を、住・食を得ながら旅行することは 困難であったに違いない。

現代においても、職業を伴う旅行の一部は自由旅行の形態をとることもあるが、今、日本で一般的に言うところの自由旅行は、レジャーや学習・修業目的の海外旅行の内、現地への居住を伴わない旅行形態を指していて、業務渡航や留学なども含まれない。そう考えると、今の 日本の自由旅行の歴史は、戦後、日本の海外旅行が自由化されて以後のだれでも旅行できるようになってから生まれた言葉であるから、1964年にその歴史は始まる。



 1964年、日本で海外旅行が自由化されてしばらくの間は、海外旅行といえば、夢のレジャーで、旅行会社の高価なパッケージツアーに参加する以外は、一般の人が海外を旅行することは困難な時代があった。1970年代になると、格安航空券なる正規の販売ルートを通さない航空券や体験的ガイドブックがアンダーグラウンドで出回りはじめ、学生や不安定雇用者など、時間の比較的自由になる若者のあいだで、若者文化の一形態として急速に広まっていった。アメリカの若者文化に端を発していることからヒッピー やフリークと呼ばれたり、当時はパッケージツアーに比して安上がりであったことから貧乏旅行者と呼ばれていた。(自分らもそう呼んでいた)当時は、現地でアルバイトをしたり、ヒッチハイクで旅行する若者も多く、善悪は別として、法律ぎりぎりあるいは時には非合法行為を行う旅行者も現れ、 欧米のドラッグカルチャーに心酔する若者が増えるなど、内外の社会的批判を浴びることも少なくなかった。

 1980年代に入ると、アンダーグラウンドであったはずの格安航空券のHISや、ガイドブック「地球の歩き方」および卒業旅行などの事業が高収益を上げるようになり販売網を拡大していった。旅行業界や出版界も注目するようになり、英会話教室や語学留学斡旋の業界との相乗効果もあり、さまざまな業種の大手が参入するようになった。バブル経済や大手の参入とともに旅行者の旅行形態もデラックスになり始め、もはや、貧乏旅行 者とは呼ばれなくなり、「自由旅行者」 や「バックパッカー」と呼ばれ、時間と金が自由になる人のむしろ贅沢な旅行として社会から見られるようになっていった。また、大手の参入により、国内の社会的批判も少なくなり、海外でもオフシーズンにやってきて、お金がないと言いながら地元の人が買えないような贅沢品をみやげに買っていく若者や日本人自由旅行者は、ひんしゅくを買うことはあっても、社会的批判も 少なくなり 、どこでも大歓迎されるようになった。(お金えを持っているから歓迎されるのは悲しいが、一般的に日本人は人当たりもソフトで平和的で、旅行マナーも悪くない人が多い。ただし、国際社会の常識にうとく、泥棒さんや詐欺的商法の人にも歓迎されているのは、喜んでいいのか、悲しんでいいのかよくわからない。)

 1990年代には、バブル崩壊の影響や、大企業の不況対策のリストラが横行するも、海外旅行熱は衰えず、大学卒業後も、フリーターとしてアルバイトや個人事業をし、転職の合間を見て海外旅行に出かける海外自由旅行リピーターも増えていった。私立学校を中心に修学旅行を海外で行う学校も増えて、大学1〜2年生のうちから海外旅行に出かける若者も増えていった。航空券の価格も自由化され、格安航空券は、航空会社のカウンターやどこの旅行会社でも買えるようになった。パッケージツアーと自由旅行の中間的形態も多くなり、自由旅行とはいえ、ホテルや現地参加の観光などを予約していくオーダーメードのパッケージや航空券とホテルのみの格安パッケージツアーも一般的になってきた。1週間程度のまとまった休みのとれるサラリーマンや、企業を退職(定年)してから自由旅行する人も増えていった。ガイドブックも自由旅行のガイドブックが何社かからシリーズで出版され、長期旅行から短期旅行まで、安宿から高級ホテルまで、都市から地方まで、自由旅行者の旅行情報不足は ずいぶんと解消されてきた。

 2000年代は、 9.11テロ事件やアフガン戦争、イラク戦争、SARSや鳥インフルエンザの流行など、旅行における安全意識の高まりと、イラクにおける人質事件に代表されるようなの誤解による自己責任論が噴出するなどして、長引く不況と相まってレジャーとしての自由な旅行や長期の旅行にブレーキがかかり始めた。空港でのテロ対策や渡航先国の安全情報が重視されるなど、自由旅行者の安全への不安も、国家や国民による外国人への偏見も増大し、自由旅行 をしてきた若者が、社会全体に与える好影響よりも過剰に報道されている。大企業の利益本意による正規雇用の減少がニートやフリーターの増加を生み出し、暇はあるが、金がない若者が増えて社会の二極化が 進行しつつある。 この社会構造の変化が、自由旅行にどのような影響を与えていくかは未知数だが、かつてのような、倹約旅行者が増えそうな気配である。一方で、金はあるが、休みのとれない人も多く、正月やゴールデンウイーク、お盆休みなどに集中する短期のパッケージ需要は拡大しており、お金のある人々にとっては、自由旅行に出かけられる長期休暇の確保が、重要な課題となっている。退職金を使ってのマスター旅行(実年旅行)は、一般的になってきた。体力の関係があり、ハンドメイドパッケージやパッケージを選ぶ人も多いが、一度でも自由旅行の魅力にはまった人々は、長年の夢を実現するため、自由旅行で世界一周旅行に出かける人もいる。語学力のある実年旅行者はますます増えて行くであろうことが予想されるので、若者文化であった自由旅行は、初老の代表的レジャーとして発展しつづけていくでしょう。

   また、インターネットの普及が、自由旅行の多様化と形態に革命的変化をもたらしつつある。 旅行会社や出版社でないとできなかった、海外の航空会社や切符、ホテル、観光の予約や詳細・最新情報の取得が、インターネットで可能になったことである。自由旅行において、安易に日程を予約で固めてしまうことは、かえってトラブルの元になることもあ るが、うまく利用すれば、安く、計画的にトラブル少なく旅行できる時代になったことは、旅行者にとってほんとうにありがたいことだ。(旅行会社は受難の時代であるが) その有効な利用の仕方のアドバイスしながら、旅行文化の質の向上と発展、そして社会進歩の推進に微力ながら貢献しようというのが、このWEBリンクガイドブックのねらいである。

●自由旅行のメリット

  • 日常生活からの脱出  家族や職場・学校・や日本社会から脱出し、少なくとも旅行期間中は、金の続く限りにおいて自由な時間を過ごせる。これは、海外旅行一般の楽しみではあるが、海外旅行でも、団体旅行では得にくい人気の秘訣である。恋人や友人との2人旅も経済的で安全度が高くおすすめできるが、日常からの脱出度と自由度は少なくなるから1人旅や途中での別行動はおすすめである。


  • 異文化体験   海外自由旅行では、特に発展途上国などを旅行すると強烈なカルチャーショックを感じることが多い。年配者は、ある意味苦痛であっても、多感で好奇心旺盛な若い人には、その体験の鮮烈さと心地よさゆえに、自由旅行にはまってしまう人もいる。体験したことのないひとには伝えにくい、恋愛のような強烈さの場合もある。その異文化をむしろ日本より心地よく感じた人、自分と相性がいいと感じたし人は、何度も訪れ、住み着いてしまった人もいる。このカルチャーショックは、個人差が大きいが、自由旅行の魅力の最大のものだと思う。異文化へ偏見を緩和し(助長される人もいるが)異なる価値観への理解を促進するのに劇的効果がある。偏狭なナショナリズムを払拭し、地球規模で、平和や環境、ヒューマニズムを考えるきっかけになる体験である。


  • 直接体験と一次情報   聞くと見るとは大違いという体験は日常生活でも多いと思うが、自由旅行に限らず旅行の魅力の一つである。教科書で学んだ知識や、マスコミの報道はある集団社会の目で加工されたものであるが(良きにつけ悪しきにつけ)自分の五感で得た情報は、本人にとっては、最も重要なものであることが多い。直接体験を重視することは、主観的判断と独断を助長しやすいという欠点をもつが、自分の頭で考える力生み出す効果も大きいし、知る楽しみを倍増させる効果もあり、自由旅行の最大のメリットの一つである。インターネットにより独断と偏見の二次三次情報が飛び交う(歓迎すべきことでもあるが)今日だからこそ、このメリットを強調したい。


  • 語学力がつく   遊学という言葉があるとうり、自由旅行にはさまざまな知識が必要であり、旅行中に身に付くが、とりわけ語学力は実践的に上達していく。もちろん、あくまで上達するのは旅行会話にすぎないく、語学留学に比して、語彙に偏りができるが、少ない語彙で実践的に意思を表示する能力(いわゆる片言)がつく。どの国を旅行し、どの言葉を使うかにもよるが、日本の学校で、英語(外国語)がきらいだったひとも、旅行という楽しみの中で、強制的に学習されていくので、その人なりに上達する。この目的が大きい旅行者は、会話集や辞書を片手に、意識的にそういう旅行をする必要がある。日本人の多い宿を避け、英語の学習なら、Lonely Planet社の英語版ガイドブックで旅行することをおすすめします。


  • 教育・修業効果  かわいい子には旅をさせろとは、昔から言われることであるが、上記の自由旅行メリットを総合して教育効果の高さを言った言葉である。ただし、短期の旅行や大名旅行、2人旅では得にくいメリットである。自由には、開放感もあるが、責任を伴い、家族や職場・学校や日本社会の助け合いや保護する力も少なくなる(一時的なものでしかも全くなくなる訳ではない)ので、自分自身を見直すきっかけになったり、自由旅行をするためには、言葉のできるできないにかかわらず多くの初対面の人と意思の疎通をはからねばならないので対人度胸も身に付く。この効果は、留学でも大きいが、留学のような定住では得られない日々の食住を確保する闘い?が倹約旅行にはあるのである。ワーキングホリデイの制度は、一部の国 しか実施されてない制約と人数枠があるが、合法的に働きながら学べるので推奨できる制度である。自由旅行ではトラブルもいっぱい起こりうる。自由旅行中泥棒さんに身ぐるみはがれた人に何人もあったが、そんなとき、お金(労働)の大切さやまわりの人の愛情のありがたみを実感できるのであろう。自由旅行は「万事塞翁が馬」で、失敗により得がたい真理にたどりつくこともができる。旅は、やり直すこともできるが、 人生はやり直しがきかないことも多い。若いうちに自由旅行の中で貴重な人生の教訓をたくさん得ることもできるのはほんとうに自由旅行のメリットだ。旅の恥はかきすてや逃避旅行では社会的批判もまぬがれないが、目に余る横柄な態度や訪問国の人に失礼な行動をとらないかぎり、若い人の倹約旅行にはたいがいどこの国の人も協力的ある。 (むこうから声をかけてくる協力的人や、日本語を話す人は下心がある場合も多いので注意が必要。)


  • 安く旅行できる  今では、同じホテルや航空会社を選べばパッケージツアーの方が安上がりな時代だが、格安航空券と安宿やユースホステルの組み合わせは、今でも安く、同じお金があれば長い期間旅行できて、上記自由旅行ならではのメリットも大きくなる。オフシーズンに倹約すれば一ヶ月間のヨーロッパ旅行を20万円ぐらいで行ってくることも可能である。 安ければいいというものでもないが、一般に、安宿に泊まった方が、その国の「普通の人々」との交流が期待でき、その国の人々の日常生活の一旦を回間見ることができる。


  • その国の中小零細観光業者の発展にささやかではあるが貢献できる  どこの国でも大都市や観光地では中高級ホテルはチェーン化された外国資本のホテルが多い。こんなことを意識しながら旅行をしている人も少ないであろうが、自らも観光産業労働者でもある管理人の立場からすれば、自己の利益とは矛盾するが、日本の大手旅行会社やグローバル企業、その国の大資本が潤う仕組みのデラックスなパッケージツアーよりは、自由旅行で、訪問国の中小零細業者との直接取引で旅をする旅行者方が、ささやかではあるが、相手国の庶民経済に貢献していると思う。ひと頃、大手旅行会社から、「自由旅行者はわがままだ」とか「現地の人に迷惑をかけている」という批判があったが、それは一部の人の話で、ちゃんとマナーを守って旅行している自由旅行者は、インドの駅で待っていてくれるリキシャワーラー(タクシードライバー)やホテルの客引き(セールスマンや送迎案内係)などと取引しながら、その国の中小零細観光業者(あるいはその労働者)にささやかな貢献をしながら旅行しているだけのことである。自由旅行者が増えてくれば、そのニーズにあわせた規模の観光業者や案内サービス業者が現地に増えてくるので、現地の大きな資本をもたない人々は、迷惑どころか歓迎していると思う。


  • ●自由旅行のデメリットと対策

  • 手間と労力と時間がかかる  旅行会社のプロがやることを全部自分でやりながら旅行する訳だから、当然、手間がかかるし、努力を要する。ボディーラングエージで旅行するにも、最低限の英語やその国の言葉の素養がいる。言葉ができて、十分な準備をしていっても、スムーズに旅行できるとは限らない。予約なしで、シーズン中の観光地へいけば、どこのホテルも満室で泊まれないこともある。そんなときは、泣く泣く別の都市に移動するか、開いていた中・高級ホテルに泊まらざるを得ず、余分な労力や出費がかかったりもする。これが、自由旅行最大のデメリットだ。自信のない人や時間に余裕のない人は、パッケージを選ぶのはその理由だ。お金はかかっても、そういう事態は避けたいと人の為に、ハンドメイドパッケージ(個人手配旅行あるいは受注型個人企画旅行)があるのが、通常のパッケージより高額な旅になるので、お金に余裕のある人や信頼できて、安く引き受けてくれる旅行会社を知っている人でないと利用 しにくい。また、すべての行程を予約して、日本語ガイドやアシスタントを付けてしまうと、自由旅行のメリットも少なくなってきてしまうので、若い人には特に、全部予約していくスタイルはおすすめできない。最近は、インターネットなどで、安宿でも予約できるところが多くなったので、最初や最後の1〜2泊と混みそうなところだけは予約していこう。

  •   交通機関や宿などの予約システムの発達や、自由旅行ガイドブックやインターネットの発達で、出かける前にずいぶん現地のことを調べてから行けるようになったが、海外自由旅行では、いろんなハプニングが起こる。travelとtroubleは語源が同じで、むかしから旅行はトラブルの連続だったであろう。トラブルを解決しながら旅行することで、問題解決能力が高まっていくから、このデメリットは若い人にとってはメリットと表裏一体の関係にある。

  • 安全対策はやはり手薄になりがち  自由旅行だから危険であるということはないが、日常からの脱出は、保護(過保護?)からの脱出でもある。 その国の文化は、その国の人に都合よいようにはぐくまれてきたので、事前学習なき異文化体験は誤解やトラブルの元にもなる。また、パッケージツアーのように専門の旅程管理責任者がいるわけではないので、ホテルのセキュリティーや移動交通手段の選定や利用上の注意も自分の判断だ。しかし、中国での大手旅行会社手配の修学旅行生が列車事故にまきこまれたり、大手旅行会社の観光バスがトルコで横転事故を起こしたり、日本のJR列車事故や、ドイツのICEの列車事故を見ていると、大手のパッケージだから安全であるとか、先進国の交通手段だから安全だもいえない。ましてや、航空機事故やテロは、パッケージの客と自由旅行の客を選ぶわけではないから、自由旅行だから危険であるということはいえない。ホテルにおいても客室での盗難は高級ホテルでも保証はないし、安い宿でもセキュリティーを重視している宿もあれば、高級ホテルでも、セキュリティー軽視のホテルもある。旅行中の安全の問題は、その国の治安問題なので、よく研究して、対策を立てて出かけたい。(このWEBガイドでは外務省の安全情報にリンクがあるので、事前チェックを)

     海外旅行でよく起こるトラブルに、病気と盗難がある。ガイドブックに載っていたからと言ってレストランの衛生状態までチェックしているガイドブックは少ない。おいしいと評判の店でも、日本の衛生基準で育った日本人が、衛生基準の低い国の食べ物を口にすれば、地元の人と抗体 や腸内菌の構成がちがう日本人は慣れるまで腹をこわしやすい。(これは食事なしのパッケージでは同じことだが。)感染症の流行の事前チェックも必要だ。水や生野菜にも注意が必要なのは言うまでもない。また、盗難は、ほとんどの国で注意が必要。外国人観光客とりわけ日本人自由旅行者は、高額なものや多額の現金を持っているし、ガードが甘いので、ねらわれている。詐欺まがいの土産物店がある国もある。かといって、なれない人が過度にガードするのは、旅行が楽しくなくなるので、盗難事故の多い国では、トラベラーズチェックの比率を増やすとか、分散して保管するとか、保険をかけておくとか、とられても困らない対策を立てて出かけたい。悪質な土産物屋のしつこい客引きには毅然とした態度が必要だが、品質や説明にうそがあったわけでなけば、ぼられたからといって後で文句を言いに行くのは大人げない。あなたがその値段でもそれがほしかったのなら、フェアートレードのつもりだったのかもしれないし、その国の商習慣を事前チェックしてないあなたのほうにも非があるからだ。 そんなトラブルがきっかけで、あなたが世界の南北格差や国際経済に関心を持つようになれば、自由旅行の楽しさは、一段と深みを持ったものになるだろう。 また、一人旅(特に女性)は、性犯罪にも巻き込まれやすいので注意しよう。


  • 中毒になりがち  自由旅行の魅力にはまってしまって1年に何回も海外旅行に出る人がいる。学生の内にはまってしまって、社会人になって、定職に着きたがらない人もいる。フリーターの増加は、大企業の利益本意の姿勢にその本質的原因があ り、フリーターの側に責任があるわけでないが、旅行のためのまとまった休みがとりたいために定職につかない人もいる。 大きなお世話かもしれないが、定職者とフリーターでは、生涯賃金に3倍程の開きがあるので、家族ができると大変な苦労を覚悟しなければなるまい。自由旅行は、自由がそのよさであり、定職に就く就かないはそれこその本人の自由であるが、長い人生においては、定職に就きながら、長期の休みをとりつつ(長期休暇がもらえない会社では、獲得する ための労働運動が必要)旅行するほうが、賢明な選択であろう。自由旅行は学習・研修目的といっても、社会からすればぜいたくな消費的行動であるから、人生設計のなかに上手に組み込んで、中毒にならない程度に持続継続的に楽しもう。


  • 後ろめたさを感じる  自由旅行している人々は、先進国といわれるかつて世界を植民地支配していた国々の人々が圧倒的に多い。時代を経て世界中の国々が独立した今日でも、グローバル化した新自由主義経済のもと著しい南北格差が世界中の人々を苦しめている。自由旅行している人々にその直接責任があるわけでもないし、どう思おうとその人のかって かもしれないが、自由旅行して、世界中の人々と交流すればするほど、その矛盾が実感としてわいてくる。環境を考えるエコツアーと称して、コスタリカ を訪れる環境先進国の人も多いが、旅行中一人あたりのエネルギー消費量を計算してみると、自由旅行の環境負荷はものすごく高いので、矛盾を感じる。また、発展途上国の人々の労働対価と私たちの労働対価の差を計算したり、消費価値の差を比較してみると、ますますその矛盾の大きさが実感できる。その差の大きさ が「メリット」となって私たちが自由旅行を楽しむこともできる訳だが、それを感じすぎ・知りすぎるとると後ろめたさが増してきて、 自己嫌悪に陥ったりもする旅行者もいる。お金を払っているとはいえ、その不公平を意識しながら旅行をしなくてはならないのが、自由旅行者の宿命であり、あえて「デメリット 」としたい。(先進国に住んでいる人やパッケージツアーで旅行している人も同じ立場であるが、それを実感して悩むことは少なくて済む。)



  •             |HomeTopSitemapLinkCopyright 2006-2007 Akio Mukunoki,  Mail to tcc00711@nifty.com