「心」は、現代の科学では、「進化を遂げ組織化された物質と共に存在し、その物質の組織管理上の重要な役割を担う、組織化されたエネルギーの一形態。」と考えられており、高等動物の場合、その役割は、「個体保存や種の保存に必要な情報を収集・編集 ・記録し、その情報を元に個体保存に有益な行動を判断し、生体の他の諸器官に命令する。」ことである。


 また、高等動物の「心」の一部で、その中心(コンピューターで言えばCPU・機能的中心で、脳内の所在は散在的とされる)に存在するとされる「意識」は、収集された「情報」により、生体内外のバーチャルな現実形態として、リアルタイムに存在していて、収集されたリアルタイムの情報と「無意識」に記録された情報(記憶や本能)を参照し、編集しながら、「目的」の達成のために可能な行動のいくつかを「想像」し「選択」し「命令」する「主体」としての役割を担っている。


 「意識」のハードウエアーは、神経細胞のネットワークで、「意識の正体は、その神経細胞の興奮による電磁エネルギーの定常状態であると考えられている。 睡眠中は、低レベル状態であるが、「REM睡眠」や「覚醒」の状態では、段階的に高レベルの定常状態を生じていると推測される。レベルの調整や脳内の所在の制御は神経細胞間の伝達物質が中心的役割を果たし、分子言語であるホルモン系や神経網が複雑な「ループ」や「フィードバックシステム」を作っていることが分かっているが、そのメカニズム全体の定説は、現段階では確定していない。
 

 「意識」のみを「心」とする人もいるが、現代の大脳生理学や精神分析学および心理学・生物学の成果では、「無意識」にある「記憶」やホルモンなどの内分泌系も「心」の役割と連続的で密接な役割を持っているし、生物進化での過程で、「心」も断続的に進化してきたことも分かっているので、「意識」を中心として「深層心理」の対象となる無意識も含めた「総体」を「心」の全体とする必要があるのである。
 

 現代では、コンピューターを使って、「心」の一部を人工的に構築しようとする試みが盛んに行われているが、あくまで「心」の機能の「一部」の「類似品」であって、化学的プロセスを含む、すべての「心」の同等品を構築するには、ハードウエアーとしては、人体と同じものにならざるを得ないし、ソフトウエアーとしては、母親の母体内の時代から、人間の脳にインプットされている情報と同じ五感情報及び身体の内部 からの情報をすべて入力するひつようがあるのではないかと思う。
 

 感情や愛情を感じる「心」を構築するためには、五感で集めた外部情報は「快・不快」や「気分」などの生体内部情報と逐次リンクさせながらインプットするひつようがあり、「臭覚」「触覚(一部は実現している)」「味覚」および生体内情報(快・不快や気分)の欠落した、コンピューターの「記憶」によって構築された「心」は、現在では、人間のそれとは程遠い。
 

 もちろん、同等品でなくても、より高性能なコンピューターに、機能の一部を肩代わりさせることができるのは、とても便利で意義深いと思う。将来の「心理学」「大脳生理学」や「科学技術」の進歩に期待と夢をもちたい。 そうして構築された「心」を
もった機械は、ペット同様、単なる機械より尊重される。

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